2017.10.12
カテゴリ: 漱石散策
文学白熱教室 カズオ・イシグロ
文学白熱教室 カズオ・イシグロ 2015 日本
作品は、世界40ヶ国以上で出版されている
「日の名残り」は、英国最高の文学賞であるブッカー賞を得ている
忘れられた個人、人間の本質に記憶を通して迫る作風。
小説とは何なのか、何故、小説を読み、小説を書くのか
小説は、娯楽なのか、社会にとって重要なのか
フィクションと小説は、何故重要なのか
人々は、事実でないフィクションを好むのか
エッセイや科学でなくフィクション、小説なのか
一緒に考えていきたい。
私が小説家になった経緯、動機は、
1954年 長崎に生まれ、5歳まで日本で過ごした
5歳から、両親の都合で、渡英し、英国で暮らし、育った
いつかは日本に帰るものと思っていた。
しかし、日本への思いや記憶が、だんだん薄らいで行くのを感じた
そこで、薄らいで行く記憶を描いて見ようと、思った
それはフィクションではあるが、記憶を安全に保存するには十分な方法であることを知った
それは、日本の歴史や状況をリサーチするものではなく、想いの記憶から、小説、物語というフィクションになったのである
「遠い山なみの光」 82年
https://youtu.be/uC5LBNghp8c?t=23m25s
戦後に育組まれた回想物語。50年代の長崎を舞台に、原子爆弾による被害は背後に暗い影を落とす。イギリスの郊外に住む主人公悦子が長崎の思い出を語るのは、実はそこで出会った佐知子という女性と自身を重ねている。佐知子とその不幸な娘の物語というフィルターを介し、悦子は、日本を想像してのフィクションである。この作品の長崎は、現実と幻想のはざまにある。
フィクションを書くことで記憶を安全に保存すること、内の記憶、心や感情、感覚的なもの(気候、景色、色、音、状況)を小説で保障、保存できることを学んだ。
「浮世の画家」87年ウイットブレッド賞
https://youtu.be/ZACS2PaaRWg?t=51s
日本への想い
私の日本、私の中で作られた日本マインド
若い頃は挑戦的にかけたが、今は、多少の技巧性を増している
1980年の日本だが、ジャーナリストや旅行作家の視点ではない。人々の過去の記憶を認めた
読者の限界性を感じた
時代遅れとなった画家を描いた
「日の名残り」 1994年 ブッカー賞
英国を舞台とする。スチーブンスという老執事.。
完璧な仕事をする執事の品格を書いた
しかし、彼の価値観は時代遅れとなった
舞台設定はどこでもよかったが、アイディアを書き留めて行くうちに自由さが増し、選択肢が増して、アイディアの発展、感情の高揚、そして物語化へ
何が小説なのか、価値とはなにか、段々深化していった
ロケーション ハンティングが重要である
「わたしを離さないで」 2005年
https://youtu.be/MMgY_2rqONc?t=13s
2回書き直し、3度目にやっと舞台設定が決まった(1990~2001)
キャシー、ルース、トミー
自分たちが臓器提供のクローンとして生まれたことを回想、そして臓器提供に終息する運命を描いた
臓器移植、介護生活、記憶の整理、回想を通して物語る
ヘイルシャム(寄宿舎)→コテージ(介護人)→ノーフォーク(臓器提供を猶予)→最高の環境で育てたが、提供の猶予はできない
大人になるということ
過去と折り合いをつける(宿命から逃れられない)
理解することと、学ぶことの違いを知る
人生の限られた時間を生きる
描かれたのは、リアルな現実の世界ではない
キャシーは、二人を失ったが、記憶を失うことはない
小説の幻想的な手法で
小説による巧みな仕掛け、
詳しくない世界観だから仕組みや、ルールの説明が必要になった
フィクションとは、
想像から生まれる異なる世界、物語を作ること
その物語を記憶で語る
何故、こんな小説が読まれるのか
小説は、表現の形式、想像の静止画のつながりだ
TV、映画は動画、連続、想像の余地がない
プルーストの「沈黙の世界」、いい作品だと思う
不安定な記憶の流れで語られている
ものがたりを語る上での手法は、紙の上に書くことでしか、できないこと
だから、物語を記憶で書くのである
一枚の画 と 動画、ムービー
↓ ↓
記憶、想像の 画像がハッキリしすぎる
広がり ↓
↓ ↓
フィクション、 ドキュメント
小説なら可能 ルポルタージュ
↓
信頼できない語り手に対しては、読者は、すでに読み取るスキルを持っている。
↓
記憶の曖昧さと過去への責任
↓
メモリーとノスタルジー
↓
いつ忘れるか、いつ思い出すか
メタファー(比喩、隠喩)について
「日の名残り」を書いたとき、英国籍をとった
作品のふたつのメタファー
重圧感情を隠すことの恐れ→恐怖性
私たちも執事なのである→忠実性
隠喩について
フィクションは、嘘か?
普遍的な事実を伝える
嘘は、嫌いである
事実でない話を作る
小説には、重要な真実が含まれている
人間として感じるもの
重大な心情や気持ちが伝えられる
事実は、状況を伝えられるが、真実ではない
「忘れられた巨人」最新作 2015年
https://youtu.be/P9t35kuIMI0?t=14s
昔のイギリスが舞台
出来事を忘れる
思い出せない
記憶を忘れたままにするか
記憶を取り戻すべきか
社会における記憶とは、
映画「シカゴ」からは、
黒人男性と白人女性のダンスについて
実際はありえない→人種差別の時代だった
過去の事実に即するか、物語って隠される真実を語るか、
「わたしが孤独だったころ」2000
https://youtu.be/WNf36qGBH3Q?t=3m35s
日中戦争、上海の祖父の記憶の後継を履くしたもの
幻想と現実の曖昧さ、
充たされざる者
https://youtu.be/vcxYsrin7tU?t=1m51s
まとめ
小説は、書くことで、心情、思いを伝えられる
人間としては、感情を分かち合い
思いを伝え合い
心情を表現してこそ、心を分かち合える
記憶を忘れないで、離れないで
命をつなぐ記憶
受賞した英国でのインタビュー
ノーベル文学賞の受賞が決まった英国の小説家カズオ・イシグロさん(62)が5日夕、ロンドン市内の出版社で記者会見した。長崎市で生まれ、5歳まで幼少期を過ごした日本について「ものの見方、書き方は日本の文化から来ている」と話した。日本人で文学賞を受賞した川端康成、大江健三郎の名前を挙げ、「その足跡に自分が続くことをありがたく思う」と語った。
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