2025.06.27
カテゴリ: 社会教育の展望
学びとは何か : 〈探究人〉になるために
学びとは何か : 〈探究人〉になるために
内容
「学び」とはあくなき探究のプロセスだ。たんなる知識の習得や積み重ねでなく、すでにある知識からまったく新しい知識を生み出す。
その発見と創造こそが本質なのだ。
本書は認知科学の視点から、生きた知識の学びについて考える。
古い知識観―知識のドネルケバブ・モデル―から脱却するための一冊。
目次
第1章 記憶と知識
第2章 知識のシステムを創る―子どもの言語の学習から学ぶ
第3章 乗り越えなければならない壁―誤ったスキーマの克服
第4章 学びを極める―熟達するとはどういうことか
第5章 熟達による脳の変化
第6章 「生きた知識」を生む知識観
第7章 超一流の達人になる
終章 探究人を育てる
従来
学びとは、知識やスキルを習得するだけでなく、物事を理解し、経験を通じて自己を成長させるプロセスです。
これから
「学び」とは,あくなき探究のプロセスだ.古い知識観を脱却し,自ら学ぶ力を呼び起こす,画期的な一冊.
概要
「学び」とは、あくなき探究のプロセスだ。たんなる知識の習得でなく、新しい知識を生み出す「発見と創造」こそ本質なのだ。本書は認知科学の視点から、生きた知識の学びについて考える。古い知識観──知識のドネルケバブ・モデル──を脱却し、自ら学ぶ力を呼び起こす、画期的な一冊
羽生善治氏推薦「学ぶことの大切さ、学ぶ方法を学ぶ大切さがわかる1冊です。」
生涯学習という言葉を耳にする機会が増えました。
これから超がつく高齢化社会に向かっていく日本において切実かつ現実的な課題であると思っています。
また、子どもの教育に関しても無数の長期間の議論が行われ続けています。
多かれ少なかれ人々は何かを日々、学び続けているわけですが、意外にもその方法論には無頓着なことも多いのではないでしょうか。
今井むつみ先生の本書では実地と研究に基づいた知に関する深い考察が描かれています。
私のことも紹介して頂いて面映ゆい限りですが、どんな異なったジャンルにおいても、エキスパートになるには洗練された学習は不可欠です。
また、本書ではそのプロセスにおいて陥りがちな点にも言及されていて、とても実用的な側面もあります。
また、言語についても深く考えさせられます。
なぜ、母国語以外の習得がかくも難しいのか(ごくごく稀に何でもすぐに習得する人もいますが。)その要因が解らなかったのですが、読後に納得をしました。
(本書前文、羽生善治「誰にでもできる探究」より)
筆者の専門である認知言語学の観点から、さまざまなエビデンスとともに人の学びを紐解き、その実現のための教育の姿を描く。
最近の教育業界では何でもかんでもアクティブラーニングだ。
しかし、それらを見ていったときに、どれだけエビデンスに基づいて語られているのだろうか。
知識偏重はNG、話し合いをしたらOK...
人は本来学ぶ力を持っている。
それは言語学習から言えることだ。
じゃあ、どうやって言語学習をしているのか。
その時点でのフィルター(制約)を使って、情報を取捨選択しながら、仮のシステムをつくり、それを元に予測を立て、さらに知識を習得していく。
そのシステムは誤っているかもしれないが、修正ができる。
最初から誤っていない、正しいものを教えれば効率がいいじゃないか、と考える人もいるかもしれないが、それは非常に困難だ。
そもそもシステムを言語化して教えることが難しいという点、一度「"正しい"知識は教わるもの」というメタ学習をしてしまうと学んだ範囲を超えた知識利用ができなくなってしまうという点からだ。
後者の問題は根深い。自律的に学ぶ行為の否定であり、文脈を超えた知識利用を否定する知識観である。
人は本来学ぶ力を持っている。その学びは"誤った思い込み"かもしれないが、修正することができる。
誤解してもいい。
わかろうとする人本来の力を促し、わかる喜びに共感し、予測範囲を広げていく中で矛盾する事実とじっくり向き合うこと。
学校はそれを練習し、探究する場所であるべきだ。
それが目指すべきアクティブラーニングの姿なのではないだろうか。
このような筆者の主張に、強く共感する。
何ヶ所か引用
p23 人は、何か新しいことを学ぼうとするときには必ず、すでに持っている知識を使う。知識が使えない状況では理解が難しく、したがって記憶もできない。つまり、学習ができない、という事態に陥ってしまう。
p93 熟達していく上で大事なことは、誤ったスキーマをつくらないことではなく、誤った知識を修正し、それとともにスキーマを修正していくことだ。
p153 世界は客観的に存在しても、それを視る私たちは、知識や経験のフィルターを通して世界を視ているのである。
視て記憶に取り込まれた情報が、「解釈されたもの」であるとしたら、それを基盤に習得される知識もまた「客観的な事実」ではありえないのだ。
p157 人間は乳児のときからこのような「思い込み」をどんどん自分でつくっていく。
そして、この「思い込み」を使って次に起こることを予測したり、新しい要素の学習をしている。
p196 思い込みなしで何かを学習することは、ほぼ不可能であるということを再度強調しておきたい。
人は何がしかの「あたり」(直観)がなければ、何かを学習することは非常に難しい。
何かを学習し、習熟していく過程で大事なことは、誤ったスキーマをつくらないことではなく、誤った知識を修正し、それとともにスキーマを修正していくことなのである。
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