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政策の哲学 中野剛志 著 集英社

政策の哲学 中野剛志 著 集英社

「政策の哲学まとめ.docx」の論点整理と要点のまとめを行います。以下はドキュメント内容を踏まえた、わかりやすい要約です。

  1. 政策の可能性

·         「公共政策の実在論的理論」は、国家政策が成立するための存在論的条件を明らかにする理論。

o    国家は行為主体に依存しつつも還元できない「構造」として実在する。

o    国家は自律的なパワーを持ち、政策担当者はそのパワーを使い社会に半・規則性を与え、政策効果(完全雇用や経済成長など)を生み出す「メカニズム」を作動させる立場にある。

·         政策の対象は目に見える事象ではなく、構造やメカニズムといった目に見えない実在を遡及的推論によって特定する。

·         社会政策の設計は、社会メカニズムに関する正しい仮説に基づくべき。

·         社会は開放系・複雑系・不確実性に満ちているため、政策担当者の裁量が不可欠。

·         急進的改革よりも、漸変的・アジャイルな試行錯誤による社会構造の転換が望ましい。

2. 社会科学の方法論

·         筆者は「実在論」を基礎とした「方法論的多元主義」を支持。

o    社会科学の探究対象は「構造」や「メカニズム」であり、遡及的推論で仮説化される。

o    主観的側面(意図や意味)は解釈学的な定性的分析、客観的側面(事物や構造)は統計学的な定量的分析の併用が必要。

o    社会は個人論でも集合論でもなく、両者を止場して捉えるべき。

o    ミクロ(個人)、マクロ(社会構造)、メソ(制度や文化)の視座が求められる。

o    社会的現実は多層的・入れ子構造であり、諸学問の総合的動員が必要。

o    構造やメカニズムは直接観察できないが、間接的に示唆できる。

o    多様な学派や方法論の採用は、実在論の共有が前提。

3. バビロン的思考様態

·         シーラ・ダウの「バビロン的思考様態」を紹介。

o    主流派経済学の「デカルト的・ユークリッド的思考様態」は二元論的だが、現実は不確実性を含む「過程」であり、中間態が存在する。

o    バビロン的思考様態は、現実の複雑さや不確実性を受け入れる柔軟な思考法。

o    本書はこの伝統に立ち戻り、現代に活かそうとする試み。

4. 証拠に基づく政策立案(EBPM)の批判

·         EBPMEvidence-Based Policy Making)は、厳密な科学的証拠に基づく政策立案を推奨。

o    ランダム化比較実験法(RCT)など定量的評価を重視。

o    しかし、現実社会は開放系・多元的であり、定量的評価の適用範囲は限られる。

o    社会実験の困難さ、因果関係の特定の難しさ、道義的問題、政策介入のタイミング逸失などの限界を指摘。

o    EBPMは政策担当者の裁量を不必要に制約し、政策の実現可能性を下げる恐れがある。

o    科学的評価は重要だが、実在論的理解と方法論的多元主義の活用が不可欠。

5. 複合危機(Polycrisis)への対応

·         現代社会は戦争、テロ、気候変動、パンデミックなど複数の危機が同時多発・連鎖する「複合危機」に直面。

o    危機の相互作用により、全体的な危機が個々の危機を凌駕する。

o    国家政策だけでは解決困難だが、国家のパワー強化は依然として必要条件。

6. 二十一世紀の政策哲学

·         「公共政策の実在論的理論」は、具体的な政策を提示するものではないが、正しい国家政策を導く視座を与える。

o    問題の表層だけでなく、構造やメカニズムの深層に着目することが重要。

o    政策担当者は裁量と想像力を持ち、現実を直視し、科学的知見を活用して政策を編み出すべき。

o    実行された政策の結果から新たな知識を得て、能力を高めていく。

o    複合危機の時代には、豊かな哲学を持つ政策担当者が不可欠。

まとめ

このドキュメントは、現代の複雑で不確実な社会において、政策担当者が持つべき哲学と方法論を論じています。実在論的な視座と方法論的多元主義、バビロン的思考様態の重要性を強調し、EBPMの限界や複合危機への対応の必要性を指摘しています。政策担当者には、裁量と科学的知見を活用し、現実の深層に迫る柔軟な政策立案が求められると結論づけています。

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