ぶらり、散歩に読書 ミチクサノオト

まちづくりについてどこから語るか?

2026−1−17 まちづくりについてどこから語るか?
 
 今回読んだ4冊は、同じ「地域再生」を扱いながら、まったく異なる角度からその風景を照らしていました。
それはまるで、ひとつの町を東西南北から眺めるような感覚です。
どの視点も欠けてはならない。
しかし、どこから語りはじめるかで、見えてくる景色は大きく変わる。
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1|〈わたし〉からはじめる地方論
──地域の“語り”を取り戻すための思想
この本は、地方創生という言葉があまりに大きくなりすぎた時代に、
「そもそも地域とは何か」を問い直す静かな反逆の書でした。
人口減少、限界集落、消滅可能性都市。
これらの言葉はすべて“外側”から与えられたものだと著者は言います。
だから地域は、いつの間にか「都市から人口を奪い返すゲーム」に巻き込まれてしまった。
では、本当に問うべきことは何か。
それは、縮小していくなかで、わたしたちは何を持続したいのかという、
きわめて個人的で、しかし地域の根幹に触れる問いです。
秋田・五城目町の実践は、
「小さな企て」「異質なものの流入」「学びの越境」など、
暮らしの手触りから地域を再構築していく姿を描いていました。
ここで語られる地方は、
“都市の対義語”ではなく、
人と人が出会う“あいだ”に生まれる場としての地方です。
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2|まちづくりを仕事にする
──現場で活動を連鎖させる“仕組み”の技法
一方で、この本はきわめて実務的です。
タウンマネージャーという、地域の現場を走り回る人々の知恵と苦悩が詰まっています。
空き店舗の再生、開業支援、情報発信、コミュニティづくり。
どれも地味で、時間がかかり、時に報われない。
しかし、ひとつの活動が次の活動を呼び、
やがて「まちが動きはじめる瞬間」が訪れる。
この本が教えてくれるのは、
地域は“仕組み”によって動き出すということです。
思想だけでも、データだけでも動かない。
現場で汗をかく人がいて、初めて町は変わる。
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3|都市戦略としての都市経営
──都市を“経営”として捉える視座
さらに視点を引き上げると、都市は「経営」の対象になります。
福岡、神山、渋谷、福井――
それぞれの都市が、産業、文化、行政、住民を巻き込みながら
長期的な戦略を描いてきた軌跡が語られます。
ここで重要なのは、
戦略・組織・プロジェクトを同時に設計するという考え方です。
地域の課題は複雑で、単発のイベントや補助金では解決しない。
都市の未来をつくるには、
・データに基づく診断
・明確なコンセプト
・担い手の組織化
・持続可能な財務構造
が必要だと説きます。
これは、地域を“場の経営体”として捉える視点。
まちづくりを構造改革として扱う、もっとも俯瞰的なレイヤーです。
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4|データで読む地方再生
──数字が語る、地域の現在地
最後の一冊は、データという冷静な鏡を地域に向けます。
子育てしやすさ、健康寿命、起業家輩出力、観光、文化、SDGs…。
47都道府県と市町村を多角的に比較し、
「なぜこの自治体は強いのか」を可視化していく。
データは残酷ですが、同時に希望でもあります。
数字は嘘をつかない。
そして、数字は改善できる。
この本は、地域の“現在地”を知るための地図のような存在です。
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4冊を貫く一本の線
──地域はどこから語りはじめるのか**
4冊を読み終えて感じたのは、
地域を語るには4つのレイヤーが必要だということでした。
1. 思想(〈わたし〉からはじめる地方論)
 地域とは何か、何を持続したいのかを問い直す。
2. 実務(まちづくりを仕事にする)
 現場で活動を連鎖させる仕組みをつくる。
3. 戦略(都市戦略としての都市経営)
 都市を経営として捉え、構造を設計する。
4. データ(データで読む地方再生)
 現状を可視化し、改善の方向性をつかむ。
この4つは、どれかひとつでは地域を動かせません。
思想だけでは動かず、実務だけでは広がらず、
戦略だけでは現場がついてこず、
データだけでは魂が宿らない。
地域は、
問い → 仕組み → 戦略 → データ
という循環のなかで、ようやく自律的に動きはじめるのだと思います。
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おわりに
──歩きながら考える地域の未来**
地域を歩くと、そこに暮らす人の息づかいが聞こえてきます。
五城目の朝市のざわめきも、
青梅の空き店舗に灯る新しい光も、
福岡の都市戦略も、
新潟のマイナカード普及率も、
すべては「地域が自分の言葉で語りはじめる」ための一歩です。
地域は、外から与えられるものではなく、
内側から静かに立ち上がるもの。
その声に耳を澄ませながら、
今日もまた、ミチクサをしながら歩いていきたいと思います。

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