2026.03.11
カテゴリ: 公共経営
「社会的割引率」のメカニズムを可視化する
2026-3-10 国会公聴会の様子
- 「社会的割引率」のメカニズムを可視化する
なぜ「4%」がそれほどまでに公共投資を殺すのか、具体的な数字でイメージすると分かりやすくなります。
例えば、「100年後に100億円の価値(便益)を生む防災ダム」を作る計画があるとします。
* 割引率 1% の場合: 現在価値は約 37億円
* 割引率 4% の場合: 現在価値は約 2億円
わずか3%の差で、将来の便益の評価額が18倍以上も変わってしまいます。4%という基準では、数十年先、数百年先の国民の安全や利益は、現在の価値に直すと「ほぼゼロ」と判定されてしまい、どんなに重要な事業も「採算割れ(B/C比が1を切る)」として切り捨てられてきたのが、この30年の実態です。
2. 歴史的背景:なぜ「4%」で止まったままなのか
日本の社会的割引率が4%に設定されたのは1990年代後半(平時)です。当時の長期金利や経済成長率を反映したものでしたが、その後、日本はゼロ金利・マイナス金利時代に突入しました。
* 市場金利の乖離: 国債(10年物)金利が0%〜1%台で推移しているのに、公共投資のハードルだけがバブル期のような「4%」に据え置かれたまま。
* 財務省の防波堤: 割引率を下げると、通る事業が増えて予算(歳出)が拡大するため、財政再建を優先する立場からは「ブレーキ」としてこの4%が重宝されてきたという側面があります。
3. 深掘り:割引率を変えた場合の具体的な波及効果
高橋氏の提言通りに1〜2%へ引き下げた場合、以下のような「質の高い投資」が解禁されます。
① 超長期インフラの正当化
リニア中央新幹線のような数十年単位のプロジェクトや、100年に一度の災害を防ぐ治水事業など、「世代を超えて利益をもたらす事業」が圧倒的に採択されやすくなります。
② 維持更新コストの「投資」化
現在は「単なる修繕費」として扱われがちな老朽化対策も、将来の事故リスク回避という「便益」を高く評価できるようになるため、計画的な予防保全が可能になります。
③ デジタル・グリーン投資の加速
耐用年数が長く、将来の生産性向上に寄与するデジタル基盤整備も、低い割引率下では投資対効果が劇的に改善します。
4. 次のステップとして検討すべき論点
この提言をさらに深く理解するために、次は以下のどのトピックを掘り下げてみましょうか?
* 【国際比較】:アメリカ(バイデン政権下での改訂動き)やイギリス(グリーンブック)では、具体的にどのように割引率を運用しているのか。
* 【B/C(費用便益分析)の闇】:割引率以外にも、日本の公共事業評価で「過小評価」されている便益(例:命の値段や時間の価値の算定基準)について。
* 【マクロ経済への影響】:高橋氏が言う「公共投資の減少で低成長が説明できる」というデータの裏付け(公的資本形成とGDPの相関)。
「日本の財政は“悪い”と言われるが、正しい指標で見れば問題は小さい。むしろ積極財政が必要」
という立場から、データを使って説明した、という内容です。
公聴会での主なポイント
1. 公聴会は「予算成立のための儀式」
- 予算委員会で採決する前に必ず行う手続きで、形式的な意味が大きい。
- 直前に依頼が来たが、過去にも何度も出ているので慣れていた。
日本経済の30年停滞の原因
高橋さんが提出した資料の説明。
- 名目GDPが伸びていない
- デフレーター(物価)が上がらない
- 公共投資(公的固定資本形成)が減りすぎた
→ これらが「失われた30年」の大きな要因だと指摘。
日本の財政は本当に悪いのか?
高橋さんの主張(データ重視)
- よく使われる プライマリーバランス(PB) は範囲が狭すぎる。
- 国の財政を見るなら 政府の資産・負債をまとめたバランスシート で見るべき。
- その観点では、日本はそこまで危険ではない。
→ 「財政危機だ」という議論は、指標の選び方が偏っていると批判。
社会的割引率の見直し
- 公共事業の採算を判断する基準である「社会的割引率」が 4% は高すぎる。
- 国際的には 2.5% 程度が妥当。
- これを下げれば、必要な公共投資がもっと実施できる。
→ 積極財政の余地が広がる という主張。
行政改革:歳入庁の創設
- 社会保険料の徴収漏れを防ぐために 歳入庁を作るべき と提案2。
- マイナンバーが普及した今なら実現可能。
円安は本当に悪いのか?
他の公述人が「円安は悪い」と述べたのに対し、高橋さんは反論。
- 円安は GDPを押し上げる
- 税収も増える
- 「近隣窮乏化」ではなく 近隣富裕化(周辺国も利益を得る)
→ データに基づけば、円安は日本全体にプラスだと説明。
高橋さんの総括
- 日本の財政問題は「見せ方」の問題が大きい。
- PBだけで判断するのは誤り。
- 政府資産を含めた 統合政府の視点 で見れば、危機ではない。
- 社会的割引率の見直しや歳入庁の創設など、制度改革が必要。
まとめ(超シンプル)
- 公聴会は予算成立のための儀式
- 日本の財政は「危機」と言われるほど悪くない
- 公共投資を増やす余地はある
- 円安はむしろプラス
- 行政改革(歳入庁など)が必要
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