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2025-11-14 年収の壁議論 再燃

所得税がかかり始めるライン「年収の壁」を引き上げる議論が再燃しそうだ。

政府は今年、長らく「103万円」だった課税最低ラインを30年ぶりに引き上げて「160万円」にした。(朝日新聞11-14

 

課税最低ラインは、最低限の生活費にあてる所得には課税しないという考え方に基づく。

日本経済は物価が上がらない状態が長く続き、1995年に「103万円」になってから変わっていなかった。

国民民主は昨年秋の衆院選で、これを「178万円」に引き上げると公約に掲げ、議席を大きく伸ばした。

95年と比べて最低賃金が173倍になったことを根拠とした。

昨年末には少数与党に陥った自民、公明両党との間で「178万円を目指す」と合意した。

ただ、自公は物価上昇分を引き上げの根拠とし、妥協策として「160万円」になった。

富裕層ほど恩恵が大きくなるのを防ぐため、所得に応じて上げ幅を変える複雑なしくみも導入された。

一律178万円とする国民民主案だと、巨額の税収減になる。

 

    高市総理の言説「経済の成長なくして財政の健全な持続性はない」という考え方に基づくと、所得税の課税最低ライン(年収の壁)引き上げ議論に対し、今後は「経済成長の促進」と「公平性の確保」を両立させる政策スタンスを取るべきでしょう。

💡 政策スタンスの方向性

1. 成長戦略としての減税の位置づけ

所得税の課税最低ライン引き上げは、実質的な減税であり、その税収減(国民民主案では巨額とされる)が財政の健全性を損なうリスクがあります。

 * 経済成長への寄与を重視する: 単なる家計支援策としてではなく、働くインセンティブを高め、消費を刺激し、ひいては経済成長に貢献するという視点で政策を設計すべきです。

   * 労働参加の促進: 「年収の壁」は、特に世帯の第2の稼ぎ手の就労時間を抑制する要因とされています。壁を引き上げ、または撤廃に近い形にすることで、労働供給の増加を促し、人手不足の解消と経済活動の活性化を図るべきです。

   * 消費の拡大: 可処分所得の増加は消費に繋がり、経済成長のエンジンとなります。特に所得の低い層への減税は、消費性向が高い傾向にあるため、景気浮揚効果が期待できます。

 * 財源確保への道筋を示す: 減税による税収減を打ち消す持続的な経済成長をどう実現するか、具体策(規制緩和、投資促進、生産性向上など)とセットで提示することが重要です。

2. 制度の公平性と複雑性の解消

引き上げ議論では、富裕層への恩恵を抑えるための複雑な仕組み(所得に応じた上げ幅変更)が導入されましたが、これは行政コストや国民の理解を妨げる要因になりかねません。

 * シンプルで公平な制度設計: 複雑な仕組みは納税者の混乱を招き、制度の効果を曖昧にします。課税最低ラインの引き上げは「最低限の生活費に課税しない」という理念に基づいているため、物価や最低賃金の上昇分を反映した簡潔で分かりやすい基準を設定し、その恩恵を低所得者層に最も厚くすることが公平性の観点から望ましいです。

 * 富裕層への対応: 所得税の基礎控除(課税最低ラインの主な構成要素の一つ)は、一律に引き上げると高所得者ほど税率が高いため減税額が大きくなる「逆転現象」が生じます。これを避けるため、高所得者に対する基礎控除の段階的廃止または減額を組み合わせるなど、所得再分配機能を損なわない工夫が必要です。

📊 具体的な政策提言

引き上げ幅の再検討と合理化

国民民主案の「178万円」や、最低賃金の上昇率(95年比1.73倍)を根拠とする合理的な水準を検討しつつ、財政への影響を最小限に抑えるため、以下の手法を組み合わせます。

 * 基礎控除の段階的かつ継続的な引き上げを主軸とし、給与所得控除の最低額の見直しと組み合わせて「最低限の生活費に課税しない」という本来の理念を明確にします。

 * 引き上げは、一度に巨額な税収減を招くのではなく、経済成長とリンクさせ、段階的に実施する中期的なロードマップを示すべきです。

働き方へのインセンティブ設計

所得税の「年収の壁」(160万円)と、社会保険の「年収の壁」(130万円など)は別の問題ですが、労働意欲を削ぐという点では共通しています。

 * 社会保険の壁への対応を優先・同時並行で実施: 課税最低ラインを引き上げても、社会保険料の負担が生じる130万円の壁が残る限り、労働意欲の抑制要因は完全に解消されません。社会保険料負担の軽減措置や適用拡大の仕組みの見直しをセットで進め、パートタイム労働者が安心して収入を増やせる環境を整備することが、即効性のある経済成長戦略となります。

財政規律と経済成長のバランス

高市総理の「成長なくして健全財政なし」の言説に従い、課税最低ライン引き上げを成長投資と捉える一方で、財政規律を完全に手放してはいけません。

 * 「成長のための減税」と位置づけ、効果を定期的に検証: 減税が実際に労働供給と消費を増やし、税収増に繋がっているかをKPI(重要業績評価指標)に基づいて定期的に評価し、その結果次第で制度を柔軟に見直す姿勢が必要です。

 * 歳出改革との両立: 課税最低ラインの引き上げによる税収減を、非効率な歳出の徹底した見直しや新たな経済成長領域からの増収によって賄うという、財政再建への強い意志を同時に示すべきです。

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