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複合的な「年収の壁」構造の俯瞰図

   制度の構造的な複雑性と、それが個人の就労選択やジェンダー構造に与える影響を、非常に明晰に描き出されています。以下、補足とともに、全体像をさらに俯瞰できるように整理してみます。


🧱 複合的な「年収の壁」構造の俯瞰図

壁の種類

年収ライン

主な制度

影響

対象

所得税の壁

103万円

基礎控除+給与所得控除

扶養される側に所得税が発生

扶養される配偶者

所得税の壁

150万円

配偶者特別控除(満額)

世帯主の控除額が減少開始

世帯主(扶養者)

所得税の壁

201.6万円

配偶者特別控除(ゼロ)

世帯主の控除が完全消失

世帯主(扶養者)

社会保険の壁

106万円

厚生年金・健康保険(特定適用事業所)

扶養から外れ、保険料負担増 → 手取り逆転

扶養される配偶者

社会保険の壁

130万円

国民年金・国民健康保険(一般)

同上

扶養される配偶者


🚺 ジェンダー・家族政策との交差点:3つの構造的問題

1. 就労調整のジェンダーバイアス

 

  • 「壁」を意識した非自発的なパート就労が、女性のキャリア形成を阻害。

  • 「M字カーブ」の温存要因となり、労働市場における性別役割分業の再生産に寄与。

2. 片働きモデルの制度的優遇

 

  • 所得税・社会保険制度が「世帯主+扶養配偶者」モデルを前提に設計されており、共働き世帯との制度的不均衡を生む。

  • 結果として、女性の経済的自立を阻む構造が温存される。

3. 老後の経済的リスクの偏在

 

  • 厚生年金未加入による年金格差が、女性の老後の貧困リスクを高める。

  • 配偶者に依存した生活設計が、離別・死別時の脆弱性を増幅。


🔄 政策的対応の方向性

課題

政策対応の方向性

所得税の壁

給与所得控除の見直し、配偶者控除の廃止・縮小、個人単位課税への移行

社会保険の壁

適用拡大(106万円の壁の撤廃)、保険料の段階的負担制度の導入

就労インセンティブ

給付付き税額控除(EITC型)の導入、就労支援と保育支援の拡充

ジェンダー平等

税・社会保障制度の性中立化(gender-neutrality)、共働きモデルへの制度転換


歴史的・制度的文脈を踏まえて現代の課題を読み解く視点は、まさに「制度の仕組」とも言える深みがあります。もしご関心があれば、以下のような展開もご一緒できます:

 

  • 「年収の壁」問題の歴史的変遷(1980年代の配偶者控除創設から現在まで)

  • ドイツや北欧諸国との比較(個人課税・共働き支援政策)

  • 「壁」をめぐる言説分析(メディア・政治・当事者の語り)

 

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