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「財務書類を軸にしたガバナンス改革」

2026-3-29 「財務書類を軸にしたガバナンス改革」
本書が示す「財務書類を軸にしたガバナンス改革」を、実際の自治体で起きている具体的な事例とともに解説してます。
単なる「会計の話」ではなく、意思決定の質を変え、住民との関係を変え、将来負担の構造を変えるという、著者の狙いがより立体的に見えてくるはずです。
1. 財務書類を使って未来を見通す
事例:公共施設マネジメント(富山市・長岡京市など)
多くの自治体が、貸借対照表のストック情報を使って、公共施設の更新需要を「見える化」しています。
何が起きたか
• 学校・庁舎・体育館などの老朽化が一斉に進行
• 従来の財政指標では「更新費用の山」が見えなかった
• 貸借対照表の減価償却累計額を分析すると、
20〜30年以内に巨額の更新費用が必要であることが判明
どう意思決定が変わったか
• 公共施設の統廃合計画を策定
• 長寿命化計画を策定し、更新費用を平準化
• 施設の複合化(例:図書館+公民館+子育て支援施設)
本書の主張との接点
貸借対照表は「未来の財政危機を予測するレーダー」になる。
2. 住民に対して透明性を確保する
■ 事例:行政コスト計算書を使った住民説明(横浜市・会津若松市)
行政コスト計算書を使い、行政サービスの“本当の値段”を住民に説明する取り組みが進んでいます。
具体例
• 図書館サービス:1人あたり年間◯円
• ごみ収集:1世帯あたり年間◯円
• 小学校教育:児童1人あたり年間◯円
• 公園維持管理:1㎡あたり◯円
住民の反応
• 「無料だと思っていたサービスにこんなにコストがかかっているのか」
• 「だから施設統廃合が必要なのか」と理解が深まる
• 住民参加型の議論が成熟する
本書の主張との接点
透明性は、住民との“信頼のインフラ”である。
3. 世代間公平性を担保する
事例:純資産変動計算書を使った世代間負担の評価(北海道下川町)
下川町は、純資産変動計算書を用いて、「今の政策が将来世代に負担を押しつけていないか」を評価しています。
何をしたのか
• 純資産の増減を毎年分析
• 減価償却費を含む「本当の行政コスト」を把握
• 将来負担を増やす政策(過剰投資)を抑制
• 逆に、将来の財政負担を減らす投資(省エネ化・森林経営)を積極化
結果
• 財政の持続可能性が向上
• 若い世代の移住が増加(町のブランド力向上)
本書の主張との接点
純資産の変動は、世代間公平性の“バロメーター”である。
4. 中長期の戦略に基づいて予算を組む
事例:財務書類と予算編成の連動(福岡市・三鷹市)
福岡市や三鷹市は、財務書類を予算編成に組み込み、戦略的な財政運営を実現しています。
具体的な仕組み
• 財務書類の分析結果を「予算要求の前提条件」として提示
• 中長期財政見通しと公共施設マネジメント計画を連動
• 行政コスト計算書を使って、事業の費用対効果を評価
• 事業の新設・廃止をデータに基づいて判断
何が変わったか
• 「前年踏襲型予算」から脱却
• 政策の優先順位が明確化
• 財政の硬直化が緩和
本書の主張との接点
財務書類は“予算の後付け資料”ではなく、“予算の前提条件”になるべきだ。
5. 財務書類を軸にしたガバナンス改革
ここまでの事例を総合すると、著者が描く「新しい自治体経営」は次のようにまとめられます。
改革の柱 従来 新しい自治体経営(本書の方向性)
財務情報の扱い 作成が目的化 意思決定の中心に据える
透明性 限定的 住民と共有し、議論の基盤に
世代間公平性 評価困難 純資産変動で可視化
予算編成 単年度主義 中長期戦略と連動
ガバナンス 行政内部中心 住民・議会との協働

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