ぶらり、散歩に読書 ミチクサノオト

「華舫」熊谷敬太郎 著 NHK出版 梗概

「華舫」のエッセンスを、全体の流れがひと目でわかるように整理しました。
大きく分けると、①謎の蒸気船「飛鳥丸」への興味、
②舟運の歴史と回漕問屋の姿、
そして③この小説に込めた想いの3つの軸で構成されています。
『華舫(かほう)』 要約
1. 消えた蒸気船「飛鳥丸」の謎
* 計画の痕跡: 明治10年頃、荒川・新河岸川の激しい蛇行流路を通して、浅草(花川戸)と川越(新河岸)を結ぶ川蒸気船「飛鳥丸」の運航計画があった。川越には、運賃表などが刷られた色彩豊かな広告ポスター(引き札)が遺されている。
* 特定の問屋の参加: この計画には、上新河岸や引き又河岸などの回漕(かいそう)問屋15軒が名を連ねていたが、すぐ隣の下新河岸の問屋や他の川越の問屋は一軒も参加していなかった。
* 歴史の闇へ: 当時、他の河川では蒸気船が盛んに運航されていた記録があるが、なぜか「飛鳥丸」に関する新聞記事や記録は一切存在せず、川越に到着した形跡もない。著者はこの「消えた飛鳥丸」の行方を追い求めた。


2. 舟運の歴史と回漕問屋の知られざる姿
* 川越を支えた舟運: 現在「小江戸」として賑わう川越の基礎は、新河岸と浅草を結ぶ舟運によって築かれた。当時、夕方に出発して翌朝に東京へ人々を運んだ高瀬船(川越夜船)は、現代の「長距離深夜バス」のような存在だった。
* 下新河岸の問屋「伊勢安」の遺産:
* 現在も残る伊勢安の文庫蔵には、明治9年の創刊当時からの「中外物価新報(現・日本経済新聞)」が欠けることなく保存されていた。
* さらに、主人と従業員の道徳や商売の規範を定めた「家法」と「商業法」という2つの掟が代々引き継がれていた。
* 著者はここから、必死に新聞を読み、明治という新しい時代を掴もうとしていた地方の回漕問屋の主人の姿を想起した。


3. 本書に込められた想いとテーマ
* 時代の狭間に生きた人々: 時代が変わる激動期には、新しい流れに乗って富を得る者がいる一方で、真面目に時代と向き合いながらも苦しみ、損をし続ける者もいる。それは現代にも通じる人間の姿である。
* 執筆の意図: 船や舟が人々の喜び・悲しみを乗せて行き交っていた時代。その河岸の賑わいや、回漕問屋の主人の人情味あふれる凛とした姿を、消えた「飛鳥丸」の行方を追う形で描きたいと考え、その想いを『華舫』という題名に込めた。

 

*(※文末には、新河岸川の舟運や伊勢安、物流博物館、寺院関係者、出版関係者など、執筆にあたり協力を得た人々への謝辞が述べられています。)

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