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利根川東遷の全体像

利根川東遷 松浦茂樹レポートから

利根川東遷の全体像:400年にわたる「川のかたち」と「社会のかたち」の交錯

1. プロジェクトの性格:一貫性なき連続性

松浦氏の核心的な主張は、「利根川東遷は一貫した計画のもとに遂行されたのではなく、時代ごとの社会的要請と技術的制約の中で、断続的かつ試行錯誤的に進められた」という点です。これは、単なる土木史ではなく、「歴史のなかの河川」としての利根川を捉える視座を提供しています。

2. 各時代の目的と事業の変遷

時代区分

主な目的

社会的背景

代表的事業

近世初期15901650年代)

治水(放水路)

江戸開府直後の水害多発と新田開発

赤堀川の開削、会の川締切り

近世後期17001860年代)

水運・物流の確保  広域治水の試み

江戸の人口増加と物流需要の拡大

内川廻しの整備、印旛沼・手賀沼の開削試み

近代(明治〜昭和初期)

近代的治水の完成  利水(農業)

近代国家の形成と農業振興政策

関宿水閘門の建設、印旛沼・手賀沼の干拓事業

3. 赤堀川開削の再解釈:治水か舟運か

松浦氏は、特に3回目の赤堀川開削(承応3年)について、舟運目的説を否定し、治水(放水路)としての機能を重視します。その根拠として、大谷貞夫氏の研究成果を取り入れ、栗橋周辺の洪水対策が主眼であったことを強調しています。これは、近世初期の東遷事業が「江戸の都市防衛」と「新田開発の基盤整備」に直結していたことを示しています。

4. 東遷の意味:川をめぐる「国家のかたち」

利根川東遷は、単なる流路変更ではなく、国家の空間構成、経済基盤、農業政策、都市防災、物流網の形成といった多様な要素が交錯する「国土形成の物語」でもあります。松浦氏のレポートは、こうした複合的な視点を通じて、河川と社会の関係を歴史的に読み解く試みといえるでしょう。

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